週刊新潮の「食べてはいけない」シリーズ

 

 週刊新潮が「食べてはいけない国産食品」シリーズの記事を連載している。
 今回は亜硝酸塩関係に触れる。
 危ない「冷凍食品」「人工甘味料」 食べてはいけない国産食品(上) 

 そうした食品添加物の安全性を評価する内閣府の食品安全委員会が本誌記事に対して“奇妙な”指摘を行ったのは、5月17日のことだった。本誌はこれまで2週にわたってハムやウィンナーなどの加工肉のリスクについて報じてきた。
 記事の中で、「避けるべき商品」としてリストアップしたのは、亜硝酸Na(ナトリウム)、ソルビン酸(ソルビン酸カリウム)、リン酸塩という3種の食品添加物がすべて使用されているものだ。
 その理由として、「亜硝酸Naとソルビン酸には相乗毒性がある」という専門家の声を紹介した上で、食品安全委員会の添加物評価書の中の、
〈両者の加熱試験反応によりDNA損傷物質が産生される〉
 という部分を引用した。
 この点について食品安全委員会は、
〈ソルビン酸と亜硝酸塩の反応生成物は通常の使用状況下とは異なる極めて限られた条件下で生成された〉ものであるから、〈ヒトの体内や食品加工の工程において起こりえない〉との“見解”を発表したのである。

 しかし、だ。
 件の添加物評価書には、あるマウス実験の結果が示されている。
〈マウスへのソルビン酸単独(15mg/kg 体重/日)の30日間経口投与による染色体異常試験において、最終投与後24時間後に染色体異常は有意に増加しないが、亜硝酸ナトリウム単独(2mg/kg 体重/日)で有意に増加し、ソルビン酸と亜硝酸ナトリウム同時(7・5+1mg/kg 体重/日)ではさらに増加している〉
 つまり、マウスにソルビン酸のみを与えても影響はなし。亜硝酸Na単独だと、染色体異常が増加。さらに、ソルビン酸と亜硝酸Naを同時に与えた場合、染色体異常がより一層、増加したというのだ。
「相乗毒性」を示すものとして引用した。しかし、食品安全委員会が出した“見解”では、それについての言及はなし。「相乗毒性」を明確に否定するのならば、こちらの実験結果にも触れなければ、それこそ“恣意的”と言われよう。

 この箇所は次の通り。
 添加物評価書 ソルビン酸カルシウム  
評価書の20ページに掲載されている。

 この添加物評価書には欧州連合食品科学委員会(SCF)の評価も掲載されている。

 ソルビン酸またはソルビン酸カリウムと亜硝酸塩の共存下における遺伝毒性物質の生成に関する試験結果の一部が相互矛盾のために信頼できず、また、通常条件下ではヒトの健康に対するハザードがない。
 ソルビン酸カルシウム  24ページ

 その様な研究があるが、結果に矛盾があり信頼できず、通常の条件下ではヒトの健康に対して潜在的危険性はないという評価である。
 評価書の食品健康影響評価で次の様な評価をしている。

 なお、ソルビン酸類に由来する副生成物、ソルビン酸類と他の食品添加物等との相互作用に関連して、発がん性、生殖発生毒性及び遺伝毒性に関する試験成績が報告されている。
 ソルビン酸と亜硝酸塩の反応生成物は通常の使用状況下とは異なる極めて限られた条件下で生成することに留意する必要があるとされており、SCF においてはソルビン酸類と亜硝酸塩の共存下における遺伝毒性物質の生成に関する試験結果の一部が相互矛盾のため信頼できず、また、通常条件下ではヒトの健康に対するハザードがないとしており、本調査会としては妥当と判断した。
 ソルビン酸カルシウム  25ページ

 >「相乗毒性」を示すものとして引用した。しかし、食品安全委員会が出した“見解”では、それについての言及はなし。
 >「相乗毒性」を明確に否定するのならば、こちらの実験結果にも触れなければ、それこそ“恣意的”と言われよう。

 評価書にはソルビン酸と亜硝酸塩の相互作用を排除した理由がしっかり書いてある。
 これこそ、資料の都合の良い箇所を抜き出した、恣意的な記事であるとしか言い様がない。

 この研究ではソルビン酸7.5(mg/kg 体重/日)と、亜硝酸ナトリウム1(mg/kg 体重/日)同時投与であるが、実際の摂取量はどうかというと・・・、厚生労働省のマーケットバスケット調査にソルビン酸の摂取量が記載されている。
 ソルビン酸:20歳以上、平均値4.407(mg/人/日)、体重50kgであれば、0.088(mg/kg 体重/日)となり、対ADI比で0.3%に過ぎず、実験に使用されたソルビン酸の量と比べ格段に摂取量は少ない。
 平成 28 年度マーケットバスケット方式による保存料及び着色料の摂取量調査の結果について 

 「亜硝酸Naはハムやウィンナーを作るのに昔から広く使われてきたもので、毒性が判明して以降も、基準を定めて、人体に影響がない範囲での使用が許可されています。
 その使用基準はソーセージなどでは、食品1キロあたり0・07グラム。
 この基準でのADI値(1日許容摂取量)は、体重30キロの子供の場合2ミリグラム、ウィンナーに換算すると30グラムで、たった2本分ほどです」

>その使用基準はソーセージなどでは、食品1キロあたり0・07グラム。

 これは誤りで、亜硝酸ナトリウムが0.07g(70mg)ではなく、亜硝酸根として70mg以下であり、亜硝酸ナトリウムとしては約105mgとなる。
 この値は外国でも同じで、FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)が設定した値で、EUなども採用している値である。
 食品安全関係情報詳細 2017(平成29)年6月15日 
 これは最大の使用量であり、実際の亜硝酸塩の摂取量は、亜硝酸ナトリウムとして0.284(mg/人/日)となっている。
 食品安全委員会が自ら行う食品健康影響評価に関し企画等専門調査会に提出する資料に盛り込む事項 
 食品中、特に野菜類には硝酸塩が多く含まれる。
 これは窒素が植物の生長に必要な物質で、硝酸態窒素のかたちで吸収されるためである。
 摂取した硝酸塩はほぼ全量が吸収され、多くは尿中に、約25%が唾液中に排出される。
 唾液中の硝酸塩の一部は口内細菌により還元され亜硝酸塩となり、唾液中の硝酸塩と共に飲み込まれ吸収される。
 食品から摂取した硝酸塩の5~7%が亜硝酸塩に還元されるとされる。
  清涼飲料水評価書 硝酸性窒素・亜硝酸性窒素

  

 食品から摂取される硝酸塩は、全年齢で一日許容摂取量(ADI)を超えている。
 食品からの硝酸塩の摂取量  http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/syosanen/sessyu/
 20~64歳の一日の硝酸塩摂取量は289mgで、この5%が亜硝酸塩に還元されたとすると、
 289mgX0.05=14.45mg
 となり、添加物として摂取する亜硝酸塩より遙かに多い量である。
 しかし、硝酸塩の摂取を押さえるために野菜の摂取量を制限するのは適切で無いとされる。

 硝酸塩の摂取については、 JECFAにおいても評価されており、「硝酸塩の摂取量は主に野菜に寄与している。しかしながら、野菜を摂取することの利点はよく知られており、「硝酸塩の生物学的利用能において野菜がどのような作用を持っているのかは明らかでなく、野菜から摂取する硝酸塩の量を ADIと直接比較することや、野菜中の硝酸塩量を限定することは適切ではない。」と報告されている。

 硝酸塩については、元々野菜に含まれている天然の硝酸塩に起因するものがほとんどであり、添加物に由来するものはごく僅かであることが本調査においても確認された。食品としての野菜の有用性、これまでの食経験、知識等から考えると、現時点で問題があるとは言えない。
 食品からの硝酸塩の摂取量  

 ハッキリ言って、食肉加工品の添加物としての亜硝酸塩を云々しても意味が無いことになる。

 この亜硝酸Na、以前は発色剤として以外の効果も期待されて使用されてきた経緯があるという。
 「冷蔵技術が発達していなかった頃には、ボツリヌス菌の発生を抑制する効果や肉の臭みを消す目的もあって使用されていました」と、野本氏が続ける。
 「ただ、加工技術が発達した今、亜硝酸Naを使うのは、商品を美味しそうに見せるためでしかない。これを使うと肉のヘモグロビンがニトロソヘモグロビンに変化し、生肉の赤っぽい色が残りやすく、見栄えが良くなるのです」

 亜硝酸塩の働きは他にもあり、食肉の獣臭さを消し、塩蔵肉特有の風味を作り出す作用があり、酸化防止の作用もある。
 食肉のすべてが判るQ&A  

 タイトルはおどろおどろしい内容であるが、実際は危険性を大げさに書いているだけに過ぎず、所詮週刊誌レベルの記事である。
 「大手スーパー現地調査! 成人病が待っている「冷凍食品」実名リスト公開」がそれを露わに著している。
 現在では「成人病」と言うのは公式には使われず、「生活習慣病」が公的に使用されている。

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