B型肝炎ワクチン定期接種化

 

 ちと古い話となったが、厚生労働省で第8回予防接種・ワクチン分科会が2/22に開催された。
 2016年10月頃よりB型肝炎ワクチンが定期接種化される予定となっていて、B形肝炎ワクチン定期接種と日本脳炎ワクチンが議題となった。  
 外国では接種を義務化している国が多く、先進国で義務化していないのは日本と、元々B型肝炎の少なかったイギリスくらいである。

 内容としては決定事項の報告が主であったが、発言を希望する傍聴者が発言する事が出来、3人の発言があった。
 意外に思ったのは、3人中2人が定期接種に反対の意見だった事。
 反対の理由の一つが、B型肝炎ウィルスに感染している母親からの出生時の母子間ブロックが上手くいっていて、ワクチンの定期化は不要という意見。
 母子間ブロックとは母親がB型肝炎ウィルスに感染している場合に生まれてくる子供に感染させないため公費負担で
  ①通常は出生後12時間以内に抗HBs人免疫グロブリンを皮下注射
  ②生後1ヶ月後と6ヶ月後にB型肝炎ワクチンを皮下注射
 これにより母親からの垂直感染を防ぐというもので、1986年より実施され90%以上の確率で母子感染が防げるというもの。
 母子間ブロックが成功しているのでB型ワクチン定期接種が不要というのは、すでにB型肝炎は過去の病気という認識では無いかと思う。
 実際は、東京都肝疾患診療連携拠点病院の国家公務員共済組合連合会虎の門病院の資料を見ると、減少傾向にあった新規のB型肝炎患者数が2000年頃より増加に転じている。
 B型肝炎に関する最新の話題 
 つまり母子間ブロックでは防げない感染ルートが存在している訳で、過去の病気というのは誤りで何らかの対策が必要なのは間違いない。
  
 別の反対の理由としてワクチンの副反応を問題にする発言もあった。
 組換え沈降B型肝炎ワクチン(酵母由来)の副反応報告状況について  
 これは製造販売業者や医療機関から報告されたもので、ワクチンとの因果関係が不明なケースも含まれている。
 この中で、死亡が製造販売業者の報告で3件、医療機関からの報告で1件含まれているが、発言者はこれを指摘して、因果関係は不明でも死亡事故が有るワクチンを接種すべきで無いとしている。
 要はゼロリスクで無い以上接種すべきで無いという趣旨と思うが、普通に市販されている医薬品でも重篤な副反応が出るケースもあり、何らかの医療行為をする以上リスクがゼロになるのはあり得ない。

 現在の日本で新たなB型肝炎が発生しているかだが、国立感染症研究所、我が国の疫学状況(専門家向けHBV) によると、表4のデータから日本全国で急性B型肝炎による新規の推定入院患者は1,800人程度と推測されるとしている。
 また、肝疾患は自覚症状が出にくいため、本人が気付かないで感染、発症し、自然治癒するケースも多いとされる。
 肝疾患でも死亡率の高い疾病が劇症肝炎で、肝臓移植をしないと生存率が30%程度しかないといわれ、国立感染症研究所の資料だと年間100例程度の発症とされ、原因の40%はB型肝炎とされる。
 2015年に神戸中央病院で入院患者3人が院内感染が疑われる急性B型肝炎を発症し、劇症化して死亡したとの報道があった。
 また、従来のB型肝炎ウィルスは急性肝炎を発症しても慢性化することはまれと言われたが、最近急増しているとされる欧米型といわれるジェノタイプA型では20~30%が慢性化するとの研究もあり、慢性化すると肝硬変、肝臓がんのリスクも発生する。
 肝炎情報センタ- 

 ワクチンを接種した際のリスクとベネフィット(利益)を考えると定期接種は妥当であろう。
 重篤な副反応で酷く評判の悪かった小児麻痺(ポリオ)の生ワクチンも、一時期は年間6000人を越える患者を出した小児麻痺をほぼ征圧したという実績は評価すべきだ。
 個人的な事だが、親戚でおたふく風邪ワクチンの副反応を心配してワクチンを接種しないでいたところ、おたふく風邪を感染、発症してムンプス難聴になり、ワクチン接種をしなかった事を悔いているというケースもある。
 もちろん可能な限り安全性を確保する事と、不幸にして副反応が発生した場合は確実なサポートが必要な事は言うまでもない。

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