アクリルアミド再び
『マックのフライドポテト、原料公開で波紋…揚げたイモ、早死リスク増の警鐘広がる』っていつの話?
2013年、マクドナルドが自社商品フレンチフライ(フライドポテト)の原料を公開すると、それはインターネットを通じて瞬く間に広がった。
揚げ用の油を含め、使用された17種類の原料のなかには、遺伝子組換えがなされたキャノーラ油、コーン油、水素添加された大豆油、日本では食品添加物として認められていないが、抗酸化作用のあるTBHQ(tert-ブチルヒドロキノン)、消泡剤のジメチルポリシロキサン、人工着色料の酸性ピロリン酸ナトリウムなどが含まれていた。
健康への影響度は定かではないものの、長期摂取によるリスクが懸念され、大きな反響を呼んだ。
これって4年前の話だよね。
サイエンスライターの水守 啓センセの記事だが少々非科学的だよ。
郡司和夫センセや南清貴センセに比べればましだけど。
>人工着色料の酸性ピロリン酸ナトリウムなど
酸性ピロリン酸ナトリウム(ピロリン酸二水素二ナトリウム)は人工着色料ではなくpH調整剤であり、カットしたポテトの洗浄やブランチング(予備加熱)の際に加え、アクリルアミドの生成を抑制するために使う。
だが、ジャガイモには気の毒な話であるが、含まれるアスパラギンというアミノ酸が高温加熱されると、アクリルアミドに変化してしまうのだ。
アスパラギンだけではアクリルアミドはできず、蜂蜜や果糖やブドウ糖の様な還元糖が高温下で遊離アスパラギンと反応してアクリルアミドとなる訳で、遊離アスパラギンだけではアクリルアミドは発生しません。
ジャガイモを低温保存すると、低温に対する防御反応として蓄積したデンプンを水溶性の果糖やブドウ糖に変化させ、細胞液の濃度を上げ寒さに対する抵抗力を上げる。
これはジャガイモに限らず他の植物でも起きることで、霜や雪を被ったキャベツや白菜が甘みが出ておいしくなるのはこのため。
なお、低温で保存して還元糖のできたジャガイモも、煮たり茹でや蒸した場合にはアクリルアミドは発生せず、むしろ甘みが出て味が良くなる傾向にある。
低温で保存されたジャガイモは、フライドポテト、ポテトチップス、ベークドポテト等、高温で調理する料理には使わない方が無難であろう。
マスコミやネット上で、外食や市販のフライドポテトやポテとチップスが叩かれたが、食品安全委員会の調査によると、フライドポテトやポテトチップスからの摂取量は意外に少なく、もやしや玉ねぎ、れんこん等、野菜全般の炒めや揚げ調理からの摂取量が思いの外多いとの調査結果であった。
アクリルアミドばく露量の推定結果
この資料によると、アクリルアミドの濃度の高い食品に,ポテトチップス(471ng/g)、形成ポテトスナック(1187ng/g)、ジャガイモ素揚げ(269ng/g)などがある。
摂取量では、家庭料理に関わる品目で多いのは、はもやし(素揚げ・炒め)の体重1kgあたり66ngでトップ、ジャガイモ(炒め)、レンコン(素揚げ・炒め)、キャベツ(素揚げ・炒め)、タマネギ(下炒め)、炊飯米、ピーマン(素揚げ・炒め)、ゴボウ(素揚げ・炒め)、にんじん(素揚げ・炒め)などが上位にある。
もやし、キャベツ、タマネギ、ピーマン炒めは、野菜炒めであり、レンコンやゴボウの炒めはキンピラ、ジャガイモやニンジン下炒めはカレーやシチューなどとということになる。
他にもコーヒー、ほうじ茶、トーストなど、普段口にする食品にも幅広く含まれる。
アクリルアミドの濃度の低い食品でも摂取量が多いと、当然の結果としてアクリルアミドの摂取量が多いことになる。
一方、加工食品や大手、中堅の外食産業はアクリルアミドの削減が進んでいる。
農林水産省の『食品中のアクリルアミドを低減するための指針』によると次のような対策がある。
・ポテトチップスやフライドポテトは低温で保存したジャガイモは使わない、低温で保存したジャガイモは15度~20度でリコンディショニングを行い、還元糖を減らす。
・甘味料としては、ブドウ糖や果糖などの還元糖を使わず、砂糖をつかう。
・可能な限り、遊離アスパラギンの含む量の少ない品種、材料を使う。
麦類やトウモロコシは遊離アスパラギンが多く、米は少ない。
・ベーキングパウダーなどの添加物はアンモニウム塩類を使わない。
アンモニウムがあると、アクリルアミドの生成が促進される。
アクリルアミド生成を抑制する機能をもつ食品や食品添加物を使用する。
・pHを下げるとアクリルアミドの生成が抑制されるので、クエン酸等の有機酸やピロリン酸二水素二ナトリウムなどpHを下げる添加物を使用する。
・二価や三価の陽イオンはアクリルアミド生成の中間物質の生成を抑制する。
二価陽イオンはカルシウムやマグネシウムで、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、塩化マグネシウムなどが食品添加物として認可されている。
三価イオンはアルミニウムで、ミョウバンが食品添加物として認可されているが、昨今のアルミニウム削減が言われている状況では使用しにくい。
・L-システイン、L-リジン、グリシンなど、アスパラギンと還元糖が反応する際に競合するアミノ酸を加える。
・ビタミンB3、B6、ビタミンCを添加する。
ただしビタミン類がアクリルアミドの生成を抑制するメカニズムは不明とされる。
・野菜類やイモを原料に使用する場合、材料をカットした後に洗浄したり、温湯でブランチングし表面の遊離アスパラギンや還元糖を洗い流す。
その際に有機酸類やピロリン酸二水素二ナトリウムを添加しpHを下げるとアクリルアミドの生成が抑制される。
・高温下でアクリルアミドが生成されるので、加熱しすぎないように加熱温度、加熱時間を設定する。
意図的に焼き目をつけない。
水分の少ない食品の過加熱に注意など。
・焦げた部分は選別し除去する。
などの方法がある。
新しいアクリルアミド対策として酵素のアスパラギナーゼがある。
アスパラギナーゼはアスパラギンをアスパラギン酸とアンモニアへの加水分解をする酵素である。
ちなみにアスパラギンとアスパラギン酸はどちらもアミノ酸だが、別の物質である。
アスパラギナーゼは2014年11月に食品添加物として指定されている。
アスパラギナーゼは酵素であり、加熱により失活している場合は原材料としての表示義務はない。
ちなみに家庭での対策としては、農林水産省の食品中のアクリルアミドの関する情報の『家庭で消費者ができること』が参考になるだろう。
ちなみにアメリカ国立衛生研究所(NIH)の資料によると、喫煙者のアクリルアミドの曝露量は、非喫煙者の約4倍で、食品からの曝露量より多いとしている。
ヒトはアクリルアミドに暴露されているか?
アクリルアミドのヒトへの暴露量は血中タンパクと結合したアクリルアミド量を測定することにより推定できる。この測定法では,アクリルアミドの職業暴露のない非喫煙者の総アクリルアミド暴露量は0.85 μg/kg体重/日と推定された。アクリルアミドの職業暴露のない喫煙者の総アクリルアミド暴露量は,非喫煙者集団よりも約4倍高い3.4 μg/kg/日と推定された。
(3ページ目)喫煙による暴露
職業暴露のない非喫煙者の付加体濃度は21 pmol/gグロビンである。これらの値は他の2試験の値と一致する。喫煙者よりも約4倍高い付加体濃度中央値と仮定すると,毎日の食事による摂取よりも喫煙はアクリルアミド暴露のより重要な供給源であるといえる。
(10ページ目)
アクリルアミドのヒト生殖発生影響に関するNTP-CERHRモノグラフ
どんなに食事に気をつけても、タバコを吸えば元の木阿弥ということに・・・・・
ちなみに冒頭に出てきたアメリカのマクドナルドは、最近の健康志向で若干逆風を受けてはいるものの業績回復中とのこと。
【MCD】マクドナルドの企業分析(2016年版)
この記事へのコメントはこちら