フードファディズム・牛乳 其の弐
乳製品と白内障
白内障の原因は乳製品と主張しているサイトを結構見かける。
例としては、Be-Bodyなるサイト。
ヨーグルトやチーズに含まれる分解された乳糖は、グルコースとガラクトースという2つのの成分に分かれています。
このグルコースは日本人にもそのまま分解吸収出来るのですが、もう一つのガラクトースという成分を分解することは、やはり日本人には出来ません。
といった誤った記述がある。
体内のガラクトースははガラクトキナーゼ、ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ、UDPガラクトース-4-エピメラーゼ等の酵素の働きでグルコースに変換される。
これらの酵素が欠損しているとガラクトースの正常な代謝が出来ず、ガラクトース血症といわれる疾病を発症する。
ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼの欠損しているのがガラクトース血症Ⅰ形と言われる。
新生児早期から消化器症状や低血糖、白内障など様々な症状が出て、乳糖除去をしないと致死的な疾病。
日本での発生頻度は約1/90万とされる。
ガラクトキナーゼの欠損しているのがガラクトース血症Ⅱ形と言われる。
白内障が唯一の症状とされ、日本での発生は約1/100万。
UDPガラクトース-4-エピメラーゼが欠損しているのがガラクトース血症Ⅲ形。
日本での発生は1/7万~1/16万とされる。
先天代謝異常症の診療指針・ガラクトース血症 /日本先天代謝異常学会
ガラクトースの代謝異常は先天性なもので、日本での発生は少ないとされ、日本人には分解できないというのは明らかに間違い。
乳糖を分解する酵素のβ-ガラクトシダーゼと、ガラクトースの分解に係わるガラクトキナーゼが名前が似ているので混同されている可能性もある。
医療の専門家である眼科医のサイトでもひっくり返りそうになる事が書かれていたりする。
専門医のコラムDr’s Column
グルコースは私たちのエネルギー源として重要な役割を果たします。しかしガラクトースは吸収されますが、そのままでは使うことができません。ガラクトキナーゼなどの酵素が働いてグルコースに変換されて初めて利用可能となるのです。もちろん乳児期にはこの酵素も持っていますが、離乳期を過ぎるとなくなってしまいます。これも哺乳動物の共通点のひとつですが、ヨーロッパ人など一部の人たちは成人になってもこの酵素を持ち続けています。
>もちろん乳児期にはこの酵素も持っていますが、離乳期を過ぎるとなくなってしまいます。
乳糖を分解する酵素のβ-ガラクトシダーゼは成長とともに減少していくが、ガラクトースを分解する酵素のガラクトキナーゼの欠損は先天的であり、ガラクトキナーゼと、β-ガラクトシダーゼを取り違えているようである。
ところで、このサイトの『ガラクトースと白内障』という項目に次の様な記述がある。
>最新医学大事典にも「ガラクトース血症」の項に~~
この文章はどこかで見た様な気がしていたが、どうやら『伝統食の復権』島田彰夫著・東洋経済新報社/不知火書房のコピーの様だ。
最新医学大辞典にも「ガラクトース血症」の項に
「血中、尿中ガラクトースの増加する遺伝的疾患。ガラクトースのグルコースへの代謝過程の酵素の欠損によるもので、次の3型がある。1)ガラクトース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ欠損症で、ガラクトース-1-リン酸の蓄積による毒性のため、生後哺乳を開始して間もなく、嘔吐、不機嫌、食欲不振、黄疸、下痢など種々の症状を呈し、後には肝硬変、腎障害、ガラクチトールによる白内障が起こる。早期診断、早期治療で予後は良好である。2)ガラクトキナーゼ欠損症で、症状は白内障のみ。3)赤血球中のウリジン二リン酸ガラクトース-4-エピメラーゼが欠損しているエピメラーゼ欠損症で、臨床症状は全くない。3型とも常染色体性劣性遺伝である」
と示されています。ここで3つに分けて記載されていますが、いま問題にしているのは2番目のものです。ここでは「遺伝的疾患」として3つとも「症」の字をつけて示していますが、現在の若者の間で問題になっている白内障は遺伝的疾患ではなく、哺乳動物が成長していくにつれて起こる正常な変化が起こっているにもかかわらず、ヨーグルトなどを摂取した結果と考えられます。
ヨーロッパ人の間ではこのような人は少数派ですから「症」を付けたくなるのかもしれませんが、世界の人類、哺乳動物の世界を見れば、これが疾患ではなくなるべくして生じてしまった結果だということがわかります。
引用『伝統色の復権』
レイアウトは違っているが、一字一句同じなので『伝統色の復権』のコピーであろう。
最新医学大事典の引用部分に「3型とも常染色体性劣性遺伝である」とはっきり先天性の疾病という記述になっていて、日本先天代謝異常学会の文書と同じ内容になってる。
ここで3つに分けて記載されていますが、いま問題にしているのは2番目のものです。ここでは「遺伝的疾患」として3つとも「症」の字をつけて示していますが、現在の若者の間で問題になっている白内障は遺伝的疾患ではなく、ここで3つに分けて記載されていますが、いま問題にしているのは2番目のものです。ここでは「遺伝的疾患」として3つとも「症」の字をつけて示していますが、現在の若者の間で問題になっている白内障は遺伝的疾患ではなく、哺乳動物が成長していくにつれて起こる正常な変化が起こっているにもかかわらず、ヨーグルトなどを摂取した結果と考えられます。、ヨーグルトなどを摂取した結果と考えられます。
> 哺乳動物が成長していくにつれて起こる正常な変化が起こっているにもかかわらず、ヨーグルトなどを摂取した結果と考えられます。
β-ガラクトシダーゼとガラクトキナーゼを取り違えているとしか思えない。 でなければ捏造。
哺乳動物の成長に伴う変化というのは乳糖の分解酵素のβ-ガラクトシダーゼであり、ガラクトースの分解酵素のガラクトキナーゼが成長とともに減少するとしている真面な資料は見たことがない。
『伝統色の復権』は明らかに間違っているが、この本を参考文献にしているサイトは非常に多い。
『目の報道と話題』もそう。
ここには次の様な記述もある。
1989年に乳製品の摂取と白内障について疫学調査の結果が報告されました。社団法人中央酪農会議から出ている研究報告書にリヒターとデュークのラットでの実験結果が写真付きで紹介されているのですから、酪農業界は当然知っているはずです。しかし、このことを知っていながら酪農製品の良いところだけを宣伝し悪いところは隠しているということは消費者の健康無視、消費者不在、消費者への背信行為です。
ここで出てきた『牛乳の栄養的および生理学的効用に関する総合研究』には次の様な記述がある。
木下らはマウスにガラクトース高含有量ダイエットを与えることにより図35に示すように、マウスの水晶体にガラクトースの蓄積が高くなり、白内障が発症したことを認め、またRichterらはマウスに多量のヨーグルトを与えることによって白内障が起こったことを報告している。
つまり通常では考えられない大量のガラクトースを摂取した場合のことで、リヒターとデュークの実験では体重の3分の1くらいというヨーグルトの超大量投与であったと言われる。
白内障 wiki
ちなみにこの『牛乳の栄養的および生理学的効用に関する総合研究』は非売品で、関東では都立中央図書館が所蔵しているので興味のある形はどうぞ。
結構面白い内容です。
しかし、明らかに誤った内容の『伝統色の復権』を参考文献にしているサイト当が多いが、そもそも誤った情報を参考にしても頓珍漢な内容にしかならない。
先天的な異常がないかぎり乳製品が白内障の原因になるとは考えづらいというのが結論。
もちろん、毎日バケツ1杯のヨーグルトを食べる様な事をしたらどうなるかは判らないけど。
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