郡司和夫センセのパクリ記事?? 牛肉のホルモン剤

   2017/03/06

 『米国産牛肉、発がん性のホルモン剤残留濃度が国産の6百倍』ですか・・・・・
 郡司和夫センセの危ないシリーズ『輸入牛肉』
郡司センセが『米国産牛肉、発がん性のホルモン剤残留濃度が国産の6百倍…今後急増の恐れ』なる記事を書いている。

 米国産牛肉がいかに危険な食品なのか。次の報告書を読めば、納得できるでしょう。
 09年に開催された日本癌治療学会学術集会で、北海道大学医学部の半田康氏・藤田博正氏らが、「牛肉中のエストロゲン濃度とホルモン依存性がん発生増加の関連」という研究報告をしています。
 これは、日本において乳がんや前立腺がんといった「ホルモン依存性がん」の増加に、牛肉に残留する肥育ホルモンが関連しているのではないかという視点から、国内で流通する米国産牛肉と国産牛肉の肥育ホルモン残留濃度を調べた研究報告です

 その結果、驚くべきことに赤身肉部分で米国産牛肉は国産牛肉の600倍、脂肪においては140倍ものホルモン残留が確認されたといいいます。
 ちなみに、国産牛肉に残留しているホルモンは、牛本来が持っている天然ホルモンと考えられます。

 学術的には何ともファジーな表現である。
 600倍とか140倍といっても何と比較して600倍なのかさっぱり判らない。
 ちなみにCiNiiのデータベースによると2010年開催の第62回日本産科婦人科学会学術講演会になっている。 

 第62回日本産科婦人科学会学術講演会要旨

 牛肉および癌組織のエストロゲン濃度一ホルモン剤使用牛肉の摂取とホルモン依存性癌発生増加との関連
 [目的】 ホルモン依存性癌は年々増加している. このうち子宮体癌は25 年間で8 倍、 卵巣癌は4 倍に増加した. その間, 食の欧米化により牛肉消費量は5 倍に達し. ホルモン依存性癌の増加に似た増加をしている. 国内牛肉消費量の25% をアメリカ産牛肉が 占めるが, アメリカではEstradiol 17βを含むホルモン剤 〔デポー剤) の投与が肉牛へ成長促進目的に行われている. 牛肉のホルモン依存性癌への関連を検討した.
 【方法】 牛肉脂肪 (アメリカ産, 国産: n =40, 40 ), 牛肉赤身 (アメリカ産, 国産: n =30,30), および, ヒト癌組織 (子宮体癌, 卵巣癌: n =50, 50 ), ヒト正常組織 (子宮内膜, 卵巣: n =25, 25) に含 ま れ る Estradiol17β (E2) と Estrone (E1) の濃度をLC ?MS/MS (測定限界 : E20.1pg, E11.5pg) で定量 した. ヒト組織を用いた研究については被験者の同意と倫理委員会の承認を得た.
 【成績】 アメリカ産牛肉のE2 , E1濃度は国産牛肉よりも顕著に高かった. 特にアメリカ産牛肉のE2濃度は, 脂肪で国産の140倍,赤身で国産の約600 倍と極めて高濃度だった. 国産牛肉では半数以上の検体がE2 , E1濃度ともに測定限界以下だった. 子宮体癌組織のE2 , E1 濃度は正常内膜に比べて進行期I期で高く, III?IV 期で低かった. 卵巣癌でも同様でI期が最も高濃度だった.
 【結論】 アメリカ産牛肉は国産牛肉に比べて非常に高濃度のエストロゲンを含有している. 一方, 組織中のエストロゲン濃度の上昇は子宮体癌, 卵巣癌の発生初期に関与していると想定される. したがって, ホルモン剤使用牛肉の摂取量の増加は、 ヒトの体内へのエストロゲンの蓄積, 濃度上昇を促し,ホルモン依存性癌の発生増加に関連する可能性があると推測される.

 この半田たちの講演会要旨を参照しているサイトは多い。
 危険な合成ホルモン剤残留牛肉、日本は大量輸入で野放し 発がんリスク、世界中で禁止  
 TPPで、「ホルモン剤牛肉」の輸入規制ができなくなる?
 他にも多数有るが、どうも AERA2014年5月26日号のパクリでは無いかと思われる。

 09年に日本癌治療学会で「牛肉中のエストロゲン濃度とホルモン依存性癌発生増加の関連」を発表。その中で、半田医師は、市販されている米国産牛と和牛のエストロゲン濃度を測定して、比較した。
 牛肉は15カ所のスーパーやデパートで、同一の個体にならないよう時期をずらして複数購入して検体とした。調べた数は、和牛も米国産牛も、脂身が各40検体、赤身が各30検体。エストロゲン(エストラジオール)濃度の平均値は、米国産牛肉は和牛と比べ、脂身で140倍、赤身部分で600倍だった。
「米国産牛肉中のエストロゲン濃度は和牛よりはるかに高く、肥育時に成長促進剤として使用されたホルモン剤の残留があると考えられました」(半田医師)
 藤田医師は、日本の「ホルモン依存性がん」の突出した増加を指摘する。ホルモン依存性がんとは、乳がんや子宮体がん、大腸がん、前立腺がんなどだ。日本とは異なり、肥育中にホルモン剤を投与された食肉の輸入を禁止しているEUでは、意外な変化があった。
「WHOのデータによると、1989年の輸入禁止後、EU諸国の乳がん死亡率が大きく下がりました」
 乳がんの死亡率は、89~06年に、アイスランドで44.5%、イングランドとウェールズで34.9%、ルクセンブルクで34.1%減少した。
 「一時はマンモグラフィーによる予防検診の成果とも言われましたが、検診や医療制度は国によって10年ほどの開きがあります。このため、マンモグラフィーの普及を主な要因とは考えづらいとの考察が、(医学専門誌の)ブリティッシュメディカルジャーナルに発表されています。
 この死亡率の低下が、食肉の輸入禁止措置と無関係とは、考えられない」(藤田医師)
  AERA

 そのWHOのデータだが、WHOの外部組織の国際ガン研究機関(IARC)のデータベースでこの記事のアイスランド、(英国)イングランド+ウェールズ、ルクセンブルグと日本の乳ガン死亡率をプロットした。

 アイスランドとルクセンブルグは大きく変動しているが、確かに1990年頃から低下する傾向にある。
 ところがである・・・・・。
 アイスランドとルクセンブルグは大きく変動して見にくにので、同じEUのフランスとイタリアのデータに差し替え、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドを追加した。

 このグラフを見ると、1990年頃から日本以外の国の乳ガン死亡率は同様に低下傾向にある。
 アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドはいずれも肥育にホルモン剤の使用を認めている。
 「1989年の輸入禁止後、EU諸国の乳がん死亡率が大きく下がった」のであるとすれば、アメリカ等ホルモン剤の使用を認めてる国の死亡率は低下しないはずだが、これらの国も低下していて、この理論は成り立たない。
 >一時はマンモグラフィーによる予防検診の成果とも言われましたが、検診や医療制度は国によって10年ほどの開きがあります。このため、マンモグラフィーの普及を主な要因とは考えづらいとの考察が~
 EU諸国だけで無くアメリカ等も死亡率が低下しているのは、検診の精度、治療の進歩によるものと見た方が妥当だろう。
 その中で日本だけ乳ガンの死亡率が上昇しているのは、乳ガンの検診率が約30%と先進国の中で低く、日本を含めアジア人の80%がマンモグラフィで診断が付きにくい高濃度乳腺(デンスブレスト)なのが原因と言われる。
 GE REPORTS JAPAN
 実際にどの程度牛肉にホルモンが含まれるかというと、少々古いが東京都立衛生研究所の宮崎らの『牛筋肉中のホルモン(エストラジオール-17β、プロゲステロン、テストステロン)濃度調査』がある。 45_49.pdf
 これによるとエストラジオール-17β(卵胞ホルモン(女性ホルモン))は国産に比べて約3倍、逆にプロゲステロン(黄体ホルモン)は国産の方が約6倍、テストステロン(男性ホルモン)は国産の方が3.5倍高いとしている。
 
 エストラジオール-17βのADI(1日摂取許容量)は0~50ng/kg/day、プロゲステロン0~30μg/kg/day、テストステロン0~2μg/kg/dayとされている。
 体重50kgに換算すると一日当りの最大摂取量はエストラジオール-17βは2.5μg、プロゲステロン1.5mg、テストステロン100μgとなり、この調査でのエストラジオール-17βの最大濃度の国産牛12.8pptでは、一日約200kgの牛肉の摂取となる。

 また、北海道大学の半田の別の論文では、「ホルモン剤使用食肉の摂取とヒト組織中エストロゲン蓄積との関連、ホルモン依存性癌の発生率の関連について結論を出す事が出来なかった」としている。
 ホルモン剤使用食肉の摂取とヒトの組織中エストロゲン蓄積おより発がんとの関連性の究明

 米国産牛肉の輸入を禁止しているEUとの間で、10年近くも論争が繰り広げられていますが、米国は合成ホルモン剤の使用を止めようとはしません

 EUの輸入禁止処置にたいしてアメリカとカナダはWTOに提訴し、EUの措置は科学的根拠に基づいているとは判断されず、1998年にEUの措置はSPS(衛生植物検疫措置の適用に関する協定)協定違反とされEUの敗訴となった。
 そして年間総額1億1680万米ドル相当の特定EU産品に対して報復関税を課した。
 2008年に紛争が解決するまでアメリカの制裁処置を認めると裁決が出された。
 EUは2009年に覚え書きを交わし、アメリカがEUに対する制裁処置撤廃するとともに、EUは高級牛肉を対象にした無関税枠を新設することにより一旦解決した。
 しかしこの無関税枠は対象国を特定したものでは無く、他国産のシェアが増えた事によりアメリカ産が縮小した。
 これに対して、EUに対し報復関税処置の再実施に向けた手続きを開始したという。
 ホルモン投与牛肉の輸入禁止を継続するEUに対し、報復関税措置の再実施に向けた手続きを開始(米国) 

 一方、日本の厚生労働省は、貿易摩擦が生じることを恐れて、輸入時の検疫で合成ホルモン剤のチェックはほとんど行っていません。 
 もし、検疫を厳しくすれば、90%近くの輸入米国産牛肉は食品衛生法違反で廃棄処分か積戻し処置となるのは確実といわれています。

 食品を輸入するには食品衛生法に従って「食品等輸入届出書」、添付書類および自主検査成績書を、厚生労働大臣宛に(具体的には通関場所を管轄する検疫所食品監視課)へ提出する必要がある。
 提出された書類だけで食品衛生法に基づく規格に適合しているかどうか判断が困難な場合は現物検査となる。
 牛肉の検査はモニタリング検査となる。
 食品の現物検査は大きく4つに分かれる。
 ①検査命令
  通常の検査で違反が続いたり、違反の可能性が高い食品に対する検査。
  輸入のたびに輸入業者の負担で検査を行い、合格しない限り輸入が出来ない。
 検査命令リスト 
 ②指導検査
  輸入者の食品衛生安全確保義務責任の観点から、初回輸入時や定期的輸入時に必要項目についての自主検査を、検疫所が輸入者に指導するもので、検査結果が判明するまで当該貨物は留置される。
 ③モニタリング検査
  検疫所が年度計画に基づいて検査を行うもので輸入貨物全体のモニタリングを目的として行われる検査で検査料は無料で、検査結果判明前でも通関手続きはできる。
  この検査は、食品衛生法違反を一定の確率で把握できるよう、食品群(171分類)や検査項目(動物用医薬品、残留農薬、添加物等)ごとに統計学的な考え方に基づいて年間計画を定めて実施される。
  必要に応じて検査率を上げたり、病原微生物の検出や残留農薬等で同一国の食品等について2回以上違反が発見され場合等には検査命令となる。
  輸入食品の1割しか検査されないというのは、このモニタリング検査の事で、違反が少ない食品が対象。
   モニタリング対象品目
  30%モニタリング強化対象品目
 ④行政検査
 輸送途上の事故等で、衛生上の問題があると思われる場合は、食品衛生監視員が当該食品の置かれている場所へ赴き、実物検査を行う。
 状況によりサンプルを採取して検疫所や国立医薬品食品試験所で微生物や添加物、残留農薬等の検査・分析を行い、検査結果が判明するまで、当該貨物は留置となる。

 現物検査により不合格となった場合は、輸入者は、検疫所長からの指示に従って、積み戻しや廃棄など行う事になる。
 ちなみに食肉はモニタリング検査の対象になっている。

 >もし、検疫を厳しくすれば、90%近くの輸入米国産牛肉は食品衛生法違反で廃棄処分か積戻し処置となるのは確実といわれています。
 デマのたぐいのレベルで、検疫が甘いという訳では無い。
 EUがWTOで敗訴したのは科学的根拠が無い規制等理由であって、合理的な理由があれば輸入は禁止できる。
 参考 厚労省QA

 食品とガンの関連に関しては、食生活の変化という説もある。
 世界各国におけるがんの罹患率・死亡率と、食事を含む環境要因との関連について 
 これによると総脂肪消費量が増えると乳ガン、前立腺ガンの死亡率が増え、砂糖の消費量がふえると乳ガン罹患率が増える。
 肉消費量と卵消費量が増えると結腸ガンの死亡率・罹患率が上がる(男)。
 一方、穀物の消費量が増えると前立腺ガンと結腸がん(男)死亡率が低下、乳ガン罹患率の低下するとの事である。

 日本でのガン死亡率が上昇をしているのは、がん検診率の低さと、食生活自体の変化の可能性が高い事による可能性がある。
  
 日本の食肉消費量は、1960年と比較して2013年では約8.5倍となっている。
 ちなみに東北大学の研究によると、1975年の日本食が健康有益性が高いとしている。
 健康的な日本食の健康有益性を検証~1975年の特徴を有した健康的日本食のヒト介入試験より~ 

 最近の日本でガンが増えたと言われるのは、食生活が洋風化したのと、検診率の低さがあるのでは無いかと思うが実際のところどうなのであろうか???

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